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朝晩、多少涼しくなってきたとはいえ、まだまだ暑いので、ちょっと涼しくなるお話を……。 ボクの仕事は家電製品の派遣販売員です。 色んなメーカーの色んな商品を販売するために、色んな地域の色んな店に行くのですが……。 今から10年ほど前。 K地方H県K市にあった電器店に入っていた時のことです。 その時、ボクは70代くらいの老夫婦に、テレビの説明をしていました。 老夫婦はとても感じの良さそうな方で、熱心にボクの説明を聞いてくれたので、ボクも出来るだけ丁寧に、親切に説明させてもらっていました。 説明し始めて少したってから、ボクは左側から刺すような視線を感じました。 ただ、接客中なのであからさまに目をそらすことも出来ず、そのまま説明をし続けました。 そのうち、左目の視界の端、見えるか見えないかのところに、人影が見えました。 5歳くらいの男の子。半ズボンに運動靴。頭には野球帽をかぶり、胸の前にサッカーボールを抱えています。 さっきからの「刺すような視線」の主は、どうやらその子のようです。 最初は、接客している老夫婦のお孫さんかと思いました。 でも、それにしては格好が「昭和」だし、視界ギリギリのところとはいえ、そんな小さな子が身じろぎひとつせず、じーっとこちらを見ているっていうのも変だなぁと感じたのですが……。 余りにも気になるので、老夫婦に、 「大画面のテレビの方が、お孫さんがゲームされたりするのに、迫力があっていいですよ」 と振ってみたところ、 「いや〜、ウチの孫はみんなもう大きいんで、ゲームなんかしませんよ」 と答えられました。 んっ? となると、あの子はこのご夫婦のお孫さんじゃない?? そう思って、男の子のいる方にチラリと目をやると……。 誰もいない……。 あ、気のせいだったかと思い、もう一度商品、そして老夫婦の方に目を向けると、やっぱり視界ギリギリのところに男の子の姿が見える。 でも、ちゃんと目を向けると、見えなくなる。 また目を戻すと、視界の端に見える。 それを何度か繰り返しているうちに、男の子の姿は見えなくなりました。 「よく電器屋にある等身大パネルってやつじゃないの?」 そう思う方も多いでしょう。 ところが、ボクの左側は、マッサージチェアのコーナー。さらにその向こうは照明器具コーナーで、少年の等身大パネルはもちろん、人が写ったポスターすらありませんでした。 接客を終えてすぐ、ボクはこの店の女性社員Kさんのところへ行きました。 Kさんは霊感が強いらしく、 「この店には子供の幽霊がいる。何度も見た」 と言っていたので、確かめに行ったのです。 「Kさん、この店、子供の幽霊がいるって言ってたでしょ? どんなカッコしてる?」 「ん? あぁ」 と、Kさんが見た子供の幽霊の様子を話し始めました。 5歳くらいの男の子。半ズボンに運動靴。頭には野球帽をかぶり、胸の前にサッカーボールを抱えてる。 「妙に『昭和』な感じの子?」 「うん。そんな感じ」 「やっぱり……」 ボクはさっき売場で見た子供の様子を伝えました。 「それ、間違いないと思う。へぇ〜っ、降りてきてたんや」 Kさんによると、その子はいつもは3階の倉庫にいるらしいのです。 以前、倉庫に上がった時に、サッカーボールをぶつけられそうになったということでした。 H県K市というと、震災で多くの犠牲者が出た場所です。 もしかしたらその犠牲者かと思ったのですが、どうやらそうではないようです。 Kさんによると、もっと前からいるっぽかったので、ちょっと調べてみると、昭和の時代にはこの店の裏に学校があったとか。 年格好から判断して、その学校に通うはずだったのに、何らかの理由で亡くなってしまった子ではないかというのが、Kさんの意見でした。 以後、その店には数ヶ月間在籍しましたが、男の子の姿は全く見ませんでした。 Kさんもその間は見ていないそうです。 彼は何を伝えたかったのでしょうか? ボク、もしくはKさんには、彼のために何かできることはなかったのか? 少し心残りではありましたが、任期満了とともにその店をあとにしました。 その店が入っていた建物は今でもありますが、今は電器店ではありません。 その後、彼がどうなったのかもわかりません。 もしかしたら、今でもあの建物の3階で、誰かが学校へ連れて行ってくれるのを、ずっと待ち続けているのかも知れません……。 |
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